マンチェスターで地獄の家探し〜その3〜
Day 7の続き
期待が高まっているので、週末にわざわざ家のまわりを視察に来たほどである。
仲介業者がポンコツ大手不動産業者ではなく、地元密着型の小さな業者という点も期待が持てる。
部屋を見て、問題がなければすぐに申し込むつもりだ。
家の前で待っていると、待ち合わせ時間に遅れて真っ青なTeslaでバキバキの白人中年男性が現れた(こっちは車が高いので、Teslaに乗ってる人をはじめて見た)。
もの凄いスピードでTeslaから降りるやいなや、もの凄い勢いでジャケットを羽織った。あまりの勢いに、ジャケットが粉々に破れるんじゃないかと思った。
喋り方もまたものすごい勢いであり、コカインをやっているのではないだろうか。ウルフ・オブ・ウォールストリートのディカプリオみたいな感じだ。妻いわく「The most intimidating guy ever」とのこと。
内見中、コカ男はずっと携帯をいじっていて何も説明してくれなかった。
わたしが審査について、「どこの業者を使ってますか?Lettingshubは面倒なので嫌なんですが」と聞いたところ、「ちょっとなに言ってるかわからない」と、にべもなく言われる。
わたしと違って発音の良い妻が補足してくれたので質問は通じたものの、「細かいことはともかく、応募すればこっちから連絡するから」と、まったく質問に答えてない。
期待していた部屋も、魚眼レンズで撮影しているのか、写真よりかなり狭い。
住人がデカければ、備え付けの家具もデカい。
45平米の部屋にカニエ・ウェストの家みたいな(行ったことないけど、そういうイメージ)巨大ソファとカウンタートップがあるので圧迫感がすごい。
とにかく、コカ男とはこれ以上関わりたくない。
失意のどん底で、次の物件へ。
Whalley Range、月900ポンド(約17万円)、1ベッドルーム家具なし
ずっと借り手が決まらないでいる、Whalley Rangeの1ベッドルームの内見の予約が取れたので見に行く。
Whalley Rangeは先述のナイスなエリアChorltonに隣接する広い地域なのだが、そのどこかによって全然雰囲気が違う。
この数日で、Whalley Range内の、Chorltonとはかなり離れた場所でも不動産屋がChorltonという触れ込みで広告を出していることに気づいた。
実際には喜多見とか狛江なのに成城を名乗っている等の、日本でもおなじみの現象だ。
問題はそのスケールが大きいことで、この部屋など狛江といってもほとんど神奈川県みたいな立地で成城を謳っている。
それはいいとしても、部屋が独特すぎる。
古い建物の屋根裏部屋なのだが、全体に窓の数が足りなくて暗い。それに、キッチンからリビングに行くためには階段を登らないといけないのだ。
帰り際、同じ建物の住人の南アジア系のおじさんから、「障害者用スペースに車を停めるな!なんのための障害者用スペースだと思ってんだ!」と、頭ごなしに怒鳴られたのも印象が悪かった。
われわれはチャリで来た、のでなんの話かまったくわからなかった。
それでも一応、不動産業者のお姉さんにアプリケーションの書類を送ってもらうようお願いするが、ついにこの書類が届くことはなかった。
あの時間はなんだったのだろう。
連日、昼は自転車でマンチェスターを走り回り、夜はReddit(インターネット掲示板)を読みあさり、いくつかのことがわかった。
(1)良い物件の内見予約は、情報が公開されて数分で埋まる。ガチャ切りにひるまず電話をかけ続け、留守番電話にメッセージを残し続けるしかない。
(2)大学の先生たちは市内の南側の郊外、とくにChorltonとDidsbury、もしくは最近ジェントリフィケーションが進んできたというLevenshulmeなどに住みたがる。しかしこれらのエリアは高くて、物件が少ない。他のエリアは、いいところとそうでないところがパッチワーク状になっているようで、素人にはわかりづらい。
(3) アメリカの大都市ほどではないものの、マンチェスターは結構エリアによって感じが異なる。ChorltonやDidsburyは緑が多くて道も綺麗だが、その周りのエリアは場所によっては道がボロボロだったりする。ただ、住んでいる人の非白人率が高まればその分家が安くなるという感じで、本当に安全に問題があるというよりは偏見も混じっていそう。
(4)不動産仲介業者はクソ野郎(Timを除く)。一人一人が悪い人とは思わないが、制度設計が彼女・彼らを嫌な人にしている。こちらのことを人間ではなく金として見ているので、お金があれば内見や申し込みの順番に割り込める。しかし、人種的マイノリティの人は親切な(というか比較的にマシな)人が多い気がする。
大本命だったコカ男の部屋がダメになったいま、もはやあと一週間強でどこかに入居するのは絶望的である。
観念してAirbnbの予約を1週間延長する。約10万円がとんでいった。トホホ…。今より状況が悪化しないことを願う。
Day 8
結局、Chorltonの怪しすぎる家はダメだったようだ。オーナーの直感メガネにかなわなかったみたい。
学校の仕事も始まり、一日中家探しばかりしているわけにもいかない。夕方の退勤後に内見に行く。
Whalley Range、月1,255ポンド(約23万円)、2ベッドルーム家具あり
これも成城と見せかけ狛江系の物件である。Chorltonとうたっているが、結構離れた場所にある。
建物の前で南アジア系の不動産屋さんと待ち合わせる。いい人っぽい。
「日本人はきれい好きだから良い」とか色々好き勝手言っているが、こちらも家がなくて弱い立場の手前、「そうそう、俺たちきれい好きだから毎日掃除する」などと言って、適当にあわせる。
建物自体は大きなビクトリア式で、裏庭や自転車を入れる小屋もあって良い感じ。ベッドルームが2つあって書斎にできそうなのはいいが、壁もレンガむき出しのままで、いかんせん古くてボロボロだ。
ハリーポッター的な?(見たことないのでイメージ)家具付きとはいうものの、テーブルやベッドなど19世紀からここにありそうだ。
シンクの下を見てみると、排水パイプはビニールテープでグルグル巻きにされていた。
キッチンにて、いかにこの物件がよく手入れをされているかについて熱弁をふるう不動産屋さん。演説中に彼がカウンターの棚を開けてみたところ、扉が崩壊してガッシャーン!と外れてしまった。
扉を直そうと四苦八苦しながら、メンテナンスの完璧さについての演説を続ける不動産屋さんの姿はシュールそのもの。申し訳ないが、笑いを押し殺すのに苦労した。
この値段でこのボロさはないでしょう。
普通の家に住みたいだけなのに、もしかして高望みしすぎなのか?もう内見も入ってないし、八方ふさがりである。
~さすがに次回で終わりだと思います~
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