「ハワイの人種」の授業とインテレクチュアル・セーフティ

今学期はなぜか、ハワイの人種に関する授業のTAをしていて、読んだことのないリーディングを読んだり、生徒さんたちがアレンジしてくれたフィールドトリップでタロイモ畑に行ったり、博物館に行ったり、一緒に勉強できて非常に楽しかった。

タロイモ畑でお勉強

ハワイは人種関係のパラダイス?

ハワイは、「すべての人種がマイノリティ」などといわれ、「多文化モデル」を具現化した「人種関係のパラダイス」といった扱いをうけることが多いが、人種間のテンションはアメリカ本土とは違う形で根深い。また、先住民の抵抗のアイデンティティのベースとして、血や人種が使われていることもしばしばあって、人種というカテゴリーを除去すればすべて解決する、というわけにもいかない。生物学的根拠はないのに、人種はそれくらい「リアル」なのである。


日系プランテーション労働者のストライキ

授業には、ネィティブハワイアンの学生、アジア系の学生、ヒスパニック系の学生、白人の学生、黒人の学生、ハワイ出身、アメリカ本土出身、アメリカ以外出身と様々な学生がいる。先生がうまく導くこともあって、ディスカッションはしばしば喧々諤々である。それぞれのアイデンティティに関わる問題だけにみな真剣。

たとえば、「白人特権」ひとつにしても、教科書的に言えばそれは、疑いなく存在する。ネイティブ・ハワイアンの人たちからすると、白人というその存在自体、植民地主義を体現していると考えることもできる。 
そもそも、ハワイが植民地化されたという歴史的経緯や、その過程でネィティブ・ハワイアンの人たちが周辺化されてきたこと、白人やアジア人が富を集中的にかかえこんだこと、は事実だから。

しかし、ひとりひとりの体験に目を向ければ、ハワイの離島出身で、自分のまわりには白人は一人もいないという環境で育った白人の学生が、自分は生まれてからずっとマイノリティで、ハワイで生まれ育って他に行くところもないのに「ハオレ」と呼ばれてみんなとは違う存在だといわれてきた、という。または、
ホノルル市内の似たような環境で育った人が、いつも白人というだけで狙われるから自警のためにギャング団を作るしかなかった、という。

すると、みんな「うーん」という感じで考えてしまう。問題は複雑だ。(ハオレは、もともとハワイの出身ではない人を指す言葉だが、今は主に白人のことをさす。蔑視的なニュアンスが含まれていることも多い。) 

こういう感じでバカにされることも 

インテレクチュアル・セーフティ

いまの例のポイントは、白人特権は存在しないとかそういうことではない。一つの問題に対していくつもの相反する立場がありえて、そこに30数人の異なる背景から生まれた視点を持ち込むと、意見の対立は避けられない、ということである。

それぞれの存在と尊厳に関わるような真剣な問題を、一学期にわたって議論した。けれども、誰かが遠慮して口をつぐんだり、他の人の意見を潰したり、また誰かが激高したり、ということ場面が一度も起こらなかったことに単純に驚いた。

クラスの中で、建設的な議論をするためには、他の人の意見に批判的でないといけない。だからといって、批判的であれば他の人を傷つけてもいいということにはならない、と少なくとも僕は思う。

この授業を見ていて、お互いに主張をして、でも過度に攻撃的になったり、感情的になったりすることもなく学ぶことができる安全な環境を、30人以上の比較的大きなクラスで作れる、というのは非常に大きな学びだった。

先生の授業の進め方が上手いこと、また、400番台のコースなので、3年生、4年生がほとんどという事情もあるけれど、みんな、同意できないことがある、というその事実自体に同意して建設的な議論を模索する 、そういうスキルを持っているのだ。知的に大人で、すごいなーと単純に感動した。 
大学院生だってできない人が多いのに(お前はどうなんだという問題も…。)

サンドイッチ理論

最初の授業で、ディスカッションをどうやって、誰も攻撃されたり、脅されたりしないような安全な空間にするか、について皆で話しあった。僕が一番好きだったのは、ある生徒が提唱した「サンドイッチ理論」だ。

「他の人の意見をクリティカルに捉えるのは大切だけど、言い方も大切でしょ?まず、自分がいいなと思ったところをほめる、次に、でもこの部分は違うんじゃないかと思った、でも、全体としては良い意見だと思ったよ、という風に肝心の具の部分をちゃんとサンドイッチすることが大切だと思う。」

ということだった。たしかに、卵サンドの主役は卵ではあるが、卵だけでパンがないと話にならない。 

サンドイッチ理論のような考え方は、この授業が終わって、大学を卒業して、そうしたら、もう一生社会学には触れないとしても、人生をいまより少し円滑に、より良くしてくれるようなアイデアの一つだと思う。

先生も今日言っていたが、ハワイは、人種関係のパラダイスではないかもしれないけれど、こと「人種」というテーマで、熱心でなおかつ平和なディスカッションがこうやってここで数ヶ月にわたって起こった、ということそれ自体、特別で意味のあること、という気もする。

いろいろな映画や本に出てきたけれど、この絵は何度見てもひどい 

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