恋人は海の向こう:留学生の遠距離恋愛、傾向と対策
恋人は海の向こう
大学院生といえども恋愛くらいする。
海外の大学院、とくにハワイのような僻地ともなると、遠距離恋愛をする大学院生が多い。そして、これがなかなかやっかいな問題である。遠距離恋愛はむずかしい。ぼくも失敗経験しかない。
毎日電話していたのに、ある日突然違う相手とデートをしていたり、遠隔地に奥さんがいるのに違う人を口説こうとして、相手から奥さんに通報された、という悲惨だが笑える話もある。
留学中の人に限らずとも、こういう問題をかかえている人は多いはず。
遠距離恋愛というのは、人の移動が増えたことの一つの結果であり、これほど多くの人が遠距離恋愛状態にあるというのは、すごく今日的な事象といえる。
社会的関心度の高まりを受け、これまでの見聞を総合、さらにふたりのエキスパートから監修を仰いだ。
これは、あくまでぼくとふたりの専門家の経験から経験的に導き出された仮説に過ぎず、今後の検証が待たれる(と、意味はなくても学術調に言ってみる)。
なぜ上手くいかないのか?
さて、遠距離恋愛はなぜむずかしいのか?まず、高校生時代からシンガポール、日本国内、アメリカで数年おきに転居、遠距離恋愛と破局を繰り返してきた元カノに聞いてみた。いわば、グローバル遠距離恋愛失敗コンサルタントである。すると以下のような問題点が浮かび上がった。
1.人格の変化
環境が変わる、周りの人たちが変わる、新しいことを学ぶ。自分のパーソナリティとか、興味関心もかなり変わる 。それゆえ、しばしば「変わっちゃったね…」という昭和のドラマのようなセリフを聞くことになる。
2.
共通の話題の消滅
相手は自分の知らないところで、自分の知らない人たちと、自分の知らないことをしている。それゆえ、話すことがなくなりがち。もしくは、自分がそこに参加していないのでどうでもよくなりがち。
ぼくも、電話で聞くハワイの寮の話の登場人物が常に同じなので、「お前らドラえもんの世界か!」と思ってしまい、喧嘩になった。
3.こっちで話す人ができてしまう
人格の変化、共通の話題の消滅によって遠隔地の恋人と話すことがなくなっているときに、自分のしたい話が、より通じる相手があらわれる。これが、失敗のメカニズムだそうだ。
4.「同じ空間にいるってこんなにすばらしいこと」
4.「同じ空間にいるってこんなにすばらしいこと」
という名言がコンサルの口から飛び出した。匂いとか、言語化できない要素は大事だそうだ。「触れるってすごいこと」という名言も。また、SEXというのは結構重要。
5. 時差問題
時差があるか、ないかは結構大きな問題で、自分が忙しくてあわあわしているときに電話がかかってきたり、逆に自分がヒマなときに相手が忙しかったりすると、イラッとしてしまうものである(心がせまいのかしら?)
6.将来問題
期間が長くなればなるほど、そして、「いついつまでに帰ってくる」という明確な約束がないと、別れる理由になりやすい。
先が見えないので、どうせいつかは別れるとか、そもそも遠隔地にいるので、他の人と何をしていてもバレないという考えが頭をよぎり、モラルが退廃する。
さらには、そもそも「つきあっているって何?」という禅問答に陥っていく。
では、われわれはどうしたらいいのだろうか?
遠距離恋愛を継続させるには
グローバル遠距離恋愛失敗コンサルタントは、遠距離恋愛を継続している人の条件として、1)道徳的に厳しい宗教を信仰している、2)お金があってすぐ会いにいける、3)結婚など法的拘束力を用いている人たちといっていた。まったく救いがない。
そこで、出会ってから8年間、そのうち結婚してから5年間、北米と日本との遠距離恋愛、結婚を続ける、他大学のすごいセンパイから話を聞いた。
センパイからは、なにをもって遠距離恋愛の「成功」とするのか、という鋭い指摘もあった。ここでは、とりあえず、遠距離でも良好な交際関係を維持している状態を「成功」とする。
以下が、センパイが経験と反省から学んだ5か条。
以下が、センパイが経験と反省から学んだ5か条。
1.相手に期待しない、頼らない
センパイは「これが一番難しくて、でも一番大事」だとつくづく思うそうだ。精神的・物理的に自立して、相手への期待値を限りなく下げておくことで、ちょっと優しいことをいってもらうだけでもすごく喜べるという。
2.コミュニケーションは大事。でもルール化したり相手に強要したりしない
しばしば、遠距離恋愛では密に連絡をとったり、くだらない話をしたりするのが大切という。しかし、時差がある中で、ルールをつくったり、「厳罰化」したりすると逆にお互いを追い詰めるという。
センパイの場合、「ゆるーく1週間に1回くらいこれくらいの時間にスカイプする。でも用事が入ったらなし、くらいのスタンス」がちょうどいいそうだ。
頻繁に連絡するのは大切らしいが、ぼくの経験によると、自分の興味関心をペラペラと話すと、「今日はスタバの店員の○○さんが可愛かった」、「今日はサブウェイの店員の…」という「可愛かった報告」になってしまい、むしろネガティブな影響があるのでオススメしない。
3.共通の目標をつくる
先のことはわからなくても、たとえば、長期休みには必ずどこかに旅行をして、その計画を一緒に立てることでテンションが上がるそうだ。また、目標とまでいかなくても、共通の習慣をつくる、というのも一般論としていいとのこと。
4.相手の変化を受け入れる
慧眼にうなったが、遠距離恋愛の危機は、離れているときよりもむしろ、久しぶりに会って、変わった相手を見るときのショックにあるというのがセンパイの分析。
「自分と一緒にいない時の相手の変化や成長を面白がって受け止められるようになると 遠距離はもっと楽になるだろうな」とのことであった。
5.結婚する
先がわからないカップルこそ、はやく結婚した方がいいというのがセンパイのアドバイス。センパイは結婚によって遠距離につきものの精神的不安からだいぶ解放されたとのこと。日本だと同性どうしでは結婚ができないので、そういうバリアはあるかもしれない。
目から鱗のすばらしいアドバイス。話を聞かせてくれた、グローバル遠距離恋愛失敗コンサルタントとセンパイに感謝します。
遠距離恋愛は、グローバリゼーションのひとつの帰結であり、「動ける体」、「動けない体」という資本や階層の問題でもあり、道徳的な側面もあっておもしろいので、今後も折りを見てまたアップデートしたい。
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