ハワイはなぜホームレスの人が多いのか?①

いわゆる一般的な「ハワイ」観と実際のハワイとの乖離の中でも最も大きいのがハワイで生活する経済的な大変さである。ハワイに旅行で来る人は多いが、ホームレスの人が本当に多いということはそこまで知られて無いようである。ハワイは人口あたりのホームレスの数が全米のどの州よりも多く、昨年、ディビット・イゲ知事がホームレス人口の増加に関する非常事態を発令、ロサンゼルス、ポートランドに続いて同様の宣言を出した3つめの自治体に、また、州レベルでは初となった。

僕の専攻のひとつは階級や経済不平等である。しかし、ホームレスの問題、特にハワイにおける状況について詳しいとは言えず、この問題について書くのははばかられる。しかし、よく日本の友達などからハワイにホームレスがいるなんて信じられないといった声を聞くので、日本語で、そしてブログでというかたちで、不十分ながらも基本的な情報をまとめて紹介することには多少の意味があるように思える。

ホームレスというのは適切ではなく、ハウスレス—家がない状態—と言った方が適切という見方があり重要な指摘だがここでは日本語での一般的表現にならって「ホームレス」という単語を使う。



本当にホームレスが多いのか?


ハワイは本当にホームレスの人が多い。チャイナタウンやカリヒ、最近開発されているカカアコや観光客の多いアラモアナ、ワイキキなどホノルル市内どこに行ってもホームレスの人たちを目にしないことはない。学校内に住んでいる人もいる。

ホームレスの人にはメンタルヘルスの問題を抱えている人が多く(家庭内暴力、貧困、戦争経験、ドラッグなど関係する要因は様々)、僕たちには見えない敵と戦っていたり、ひとりでずっとしゃべっていたり、通行人を追いかけまわしたりする人もなかにはいて、いけないとは思いつつも正直怖いなと思ってしまう。

僕は大学生の頃よくバイトで新宿中央公園や都庁のあたりに行っていたけど、そこでも炊き出しの日などを除けばこれほどの人数のホームレスの人たちを見たことはない。インドなどの、一般的に貧しいとされる国でもここまで家のない人が大勢、それもいたる所にいるというのは経験がない。

最新の調査によれば、今年1月24日の夜に数えたところ、ハワイ州全体で7921人のホームレス状態の人が、オアフ島だけで約5000人がいたということである。もちろん、この調査ではカウントされなかった人がいるであろうことは容易に想像できる。

この大規模調査によると、2014年から2015年のあいだに全米ではホームレス人口が約2%減少したが、ハワイでは約10%増加し、全米最大の増加率を記録した。また、いつホームレスになってもおかしくない予備軍の人口も12%増加した。


アメリカで一番家賃の高い州

ワイキキなどにバケーション用や投資用の誰も住んでいない部屋がたくさんあるにもかかわらず、ここで働く人は大渋滞のなか早朝から通勤し、家が借りられなくて路上に寝ている人もたくさんいるというのがハワイのかなしいところである。

ハワイにこれほどホームレスが多い直接的要因のひとつには異常な地価の高騰がある。ホノルルにおける1ベッドルームのアパートメント(日本だと1DKかな)はひと月の家賃が平均1,760ドル(約18万円くらいか)であり、全米で9番目に高い。2014年から2015年の一年間に家族向け物件の家賃は7.9%上昇した。つまり、2014年に月約2,000ドルだった物件は2015年には約2,200ドル払わないと借りられないことになる。

フルタイムで働いて、ハワイ州で2ベッドルーム(2DK)の部屋を借りるのに必要な時給は1時間34.22ドルと全米の中でも圧倒的に高い(画像参照)。僕はトイレ風呂キッチン共同で隣人が洗面所の床を毎朝水浸しにする学生寮の小さな部屋に住んでいるがそれでも家賃が月700ドルもする。悲惨である。


















週に124時間働かないと家が借りられない

家賃は高いが、賃金は安い。ハワイ州の最低賃金は8.5ドル(約900円)、平均賃金は1時間14.53ドル(約1,500円)である。これは他の大都市を持つ州、例えばカリフォルニア(それぞれ10ドルと19.22ドル)やニューヨーク(9ドルと22.85ドル)などと比べて低い。

結果、ハワイ州は家を借りるのに必要な賃金と実際に払われている賃金の差が全米で最も大きい州である(画像参照)。



最低賃金で働いた場合、ハワイ州では一週間に124時間働かないと1ベッドルーム(1DK)のアパートメントを借りることができない(これは生活費をぬきにしての話である)。子供がいて2ベッドルームの家が必要だったら週161時間働かないといけないことになる。1週間は168時間なので1ベッドルームの部屋を借りるには一日17時間労働×週7日、2ベッドルームの場合は一日23時間労働×週7日ということになる。これでは電通以上の長時間労働であり過労死してしまう。

実際にハワイでは生活のために仕事をかけもちするのは珍しいことではなく、学校の教員など公務員も休みの日や仕事の後にアルバイトしてなんとかやりくりしている。
















エクスパルジョン・イン・ホノルル

最低賃金で働いている人は多い。最低賃金すらもらえていない人もいる。一生懸命働いても家に住めないという不条理である。

賃貸物件は利回りが低く、初期投資を回収して利益をあげるまでに時間がかかる。そのため土地デベロッパーたちは過去三十年間ホノルルにほとんど賃貸用物件を建てず、ミドルクラスやワーキングクラスには縁のない投資用の高級コンドミニアムなどばかり開発してきた。そうした物件を所有しているのは日本人やオーストラリア人、アメリカ人などである。ハワイのホームレス人口には原住民であるネィティブ・ハワイアンが多い。彼、彼女らが家を持てないのは皮肉だし、本当に悲しいことだ。

結果として、ホノルルには誰も住んでいないような高層マンションや投機用の豪華な一戸建てが乱立する一方で、賃貸市場には第一次世界大戦の頃から改装していないような家しかなく、家賃は高額である。それを負担できない人は路上で寝ることになる。コロンビア大学の社会学者サスキア・サッセンはこのような経済の金融化とそれに付随する土地の収奪を単なるエクスクルージョン(排除)を超えたエクスパルジョン(駆逐)という暴力システムと名付けた。

長くなってしまったので、残りは次回以降。ホームレス問題に関するドキュメンタリー映画の上映会をこんどやるのでその感想や、ハワイは生活費全体が全米一高い州であること、ホームレスネスと人種の問題、また路上で生活することそのものが犯罪化されてしまうことなどについて書きたい。






コメント

人気の投稿