2024年に読んだ本ベスト10
例年通り、わたしが今年たまたま読んだ本の中でおもしろかった本ベスト10冊。かならずしも今年出た本ではなく、順番は適当です。
Babel: Or the Necessity of Violence: An Arcane History of the Oxford Translators' Revolution R.F. Kuang
妻が買って家で埃を被っていたのを見つけて読み始めたらおもしろくて、この本のおかげで死んでいた読書熱が復活。19世紀オックスフォードの王立翻訳機関に中国から連れてこられた少年が主人公の、植民地主義・言語をテーマにした壮大な物語。著者はアメリカの大学院生らしく、自分と比べると人間の才能の差というのはすごい。同じ著者のYellow Faceも非常によかった。どちらもなぜ日本語訳が出ていないのか謎。
対馬の海に沈む 窪田新之助
出たばかりの本で、この冬休みに読んだが、すごい本。著者は農協系の新聞出身のジャーナリストで、対馬のJAを舞台にした20億円近い巨額保険金不正請求事件を追っていく。事件を起こして亡くなった職員に「たかった」JAや島民たちの業は深いと感じた。
傷ついた世界の歩き方:イラン縦断記 フランソワ=アンリ・デゼラブル
いま、一番行ってみたい国はイランである。しかし、お金も時間もないし行けそうにない。この本は若いフランス人作家がプロテストの余波が残るイラン各地を旅して、そのことを淡々と書いているだけなのだが、イランの日常感が伝わってきて非常によかった。イラン本でいうとイランの地下世界 若宮總もおもしろかった。
たまたま文庫で手に取って読んでみたが素晴らしい本。普通の大学生が自然写真家になることを夢見て、ミネソタの有名写真家に弟子入りするべく突撃訪問した話。それから20年間にわたってその地域で動物写真を撮り続けているという。本に感動したので写真集も買ってしまったが、これも良かった。
絶海 英国船ウェイジャー号の地獄 デイヴィッド・グラン
英語版を買ったのだが、分厚い本で「読む→忙しくなって放置→どこまで読んだのか分からない」を繰り返していて、夏頃にあきらめて日本語版を買った。18世紀のイギリス船、ウェイジャー号が壮絶な航海を経て無人島に流れ着くのだが、引き込まれて一気読み。デイヴィッド・グランは、キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンも最高におもしろかった。
シナモンとガンパウダー イーライ・ブラウン
「唯一無二の海賊冒険×お料理小説!」という宣伝文に釣られたのだが、たしかにその文句通りの話。19世紀イギリスで海賊に誘拐された料理人が生き延びるために料理を作る。全体にストーリーはめちゃくちゃなのだが、非常におもしろかったし結構笑えた。疲れているときにいいと思う。
化学の授業をはじめます。 ボニー・ガルマス
高野秀行さんがTwitterでオススメしていたので読んだが、めちゃくちゃおもしろい小説だった。1960年代アメリカ、シングルマザーの科学者の女性が女性差別と闘ううちに、科学に基づいた料理術を披露することでなぜか料理番組の名物MCになる。読むと元気が出る。
力道山未亡人 細田 昌志
JALのフライト・アテンダントだったのに突然力道山と結婚することになり、しかも直後に力道山が亡くなってしまい30億円の負債を残された「力道山未亡人」の話。暗くなりそうなところだが、未亡人の人柄のおかげでむしろ明るいトーンなのが印象的。裏テーマは闇の戦後史×プロレス史×朝鮮半島との関係という感じで知らないことが多くて勉強になった。
われは熊楠 岩井 圭也
生物学者・南方熊楠の生涯を追った小説。わたしは南方熊楠のことを何も知らないので史実的に正しいのかどうかは知らない。単に物語として楽しく読んだ。数十年間にわたって弟に経済的に寄生したのち、援助を打ち切られて逆ギレするなど熊楠のモラル退廃ぶりが良い。「有名な研究者ですら日々の悩みがこんなにあるのか」と思った。
ハヤブサを盗んだ男――野鳥闇取引に隠されたドラマ ジョシュア・ハマー
絶滅危惧種のハヤブサなどの希少動物を取引する巨大な闇取引市場が存在するという。主な買い手は中東の大金持ちで、売るのは世界中で希少な動物の卵を盗んできたハンターたち。著者は闇取引犯を追って世界中をめぐり、彼らの行動を詳説。想像もしなかったことが世の中にはあると教えてくれる。鳥がそんなに儲かるとは…。
みなさん良いお年を!
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