2023年に読んだ本ベスト10

今年は2度しかこのブログを更新しなかった。いっそのこと閉鎖してしまうかとも思うのだが、それすら面倒でただただ放置している。今年3度目の更新は、例年どおり、わたしがたまたま今年読んでおもしろかった本10冊。

かならずしも今年出た本ではない。順番はランキングではなく、適当。


韓国の寒さに耐えかねて先日行った四国。最高でした。ちなみに今日のソウルは吹雪。



われら闇より天を見る クリス・ウィタカー


カリフォルニアの海辺の街で起こった殺人事件と、ある「無法者」の少女の冒険をめぐるミステリー。めちゃくちゃおもしろかった。最後は夜なべで読んだ。


人類の深奥に秘められた記憶 モアメド・ムブガル・サール


安くないので買うか迷ったが、読んでみたらすごい本。パリに住むセネガル出身の新人作家ジェガーヌが謎に包まれた同じセネガル出身の作家エリマンの足跡を追う。ストーリーが入り組んでいて難しいのだが、めまぐるしく展開するので読んでいて全然飽きない。よくこんな複雑なものを書けるな、と思う。


太陽の子——日本がアフリカに置き去りにした秘密 三浦英之


日本企業によるコンゴでの鉱山開発によって、日本人社員と現地の女性とのあいだに出来たこどもが日本人医師によって毒殺された、という噂を追ったルポ。知らなかった話ばかりで感嘆。ノンフィクションの強さを感じた。


イラク水滸伝 高野秀行


高野さんの新刊は、国家による統治が及んでいないイラクの湿地帯紀行。これだけの内容をおもしろく1冊の本にまとめるのは職人芸。Tiktokで期せずして有名人になってしまうのには笑った。


明治のナイチンゲール——大関和物語 田中 ひかる


大関和(ちか)というひとりの女性の人生と、日本の近代における「看護婦」という職業の成立を書いた本。著者は歴史社会学者だそうで、社会学とノンフィクションのいいところどりになっていると思う。


黒い海——船は突然、深海へ消えた 伊澤理江


2008年に何の前触れもなく突然転覆・沈没したカツオ漁船、第58寿和丸の事故の深層を追った著者がとんでもない疑惑に直面する。Amazonのオススメにでてきたので、とくに期待せずに読んだのだがものすごい本だった。最高。


K-POP現代史——韓国大衆音楽の誕生からBTSまで 山本浄邦


K-popの歴史を追った本。ひとつのテーマから見ることで、すばらしい現代韓国社会入門書になっている。今年は斉藤真理子さんの『韓国文学の中心にあるもの』にも同じ感想を持った。


母を失うこと——大西洋奴隷航路をたどる旅 サイディヤ・ハートマン


アフリカ系アメリカ人の大学教授であり作家の著者が、奴隷制の歴史を追ってガーナを旅する。重厚な文体、内容は非常に重く、なおかつ難しいのできちんと理解できたかは心元ないが、それでもすごい本だということはわかった。


半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 クリス・ミラー


ビジネスとは無縁の生活なので、普段そういう本は読まない。しかし、この本をたまたま読んだら大変おもしろかった。半導体産業の歴史と、それがいかにして国際関係、とくに東アジアの最重要問題の一つになったのかを読みやすく書いていて、目から鱗が10回くらい落ちた。著者はタフツ大学の政治学者。


北関東「移民」アンダーグラウンド――ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪 安田 峰俊 


北関東に張り巡らされた、ベトナム人不法滞在者たちのネットワークを描いた本。タイトルに少し難がある気がするが、内容は不法滞在者たちを「かわいそうな弱者」として描いたり、排外主義的な見方に陥らず、その複雑性を伝えていて非常に勉強になった。最近出た同じ著者の『戦狼中国の対日工作』も非常におもしろかった。


良いお年を!

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