「学会」とは何か?〜ポルトガル大航海編①

先生「来年リスボン行きたい?」
あさひな「はい!」

このような8ヶ月前のやりとりから「学会」に行くことになった。ポルトガルでうまいものを食べたい 。それが主なモチベーションである。学会とは、同じ分野の研究をしている先生や生徒が一同に会す機会であり、学究に生きる村民たちがつどう村人会議のようなものだ。ちょうどポルトガルでのEAJSという村人のつどいから帰る途中なので(ライブ感は大切)、今回はこの謎の空間について私の限られた経験から報告する。

学会とは?

さて、大学院生の生活というのは、自分たちが思っている以上に謎につつまれているようだ。 こと「学会」なんて、私は大学院にくるまで全く存在を知らなかった。 学会の一般的なイメージは「めがねをかけた人がいっぱいいてわけのわからない話をしていそう」という感じじゃないかと察する。たしかに、社会科学系の学会に行くときちんとした身なりの真面目そうな人は多い。しかし、ゴミ置き場から拾ってきた服を洗濯して着ていると思われる無頼系ファッションの人や、50cmくらいあるヒゲ、洗ってなさそうなロン毛、レズビアン感のすごい髪型(左右非対称)などの方々の割合が一般社会に比べて高く、総じてクセが強い印象でもある。

今回の学会では、イタリア人の先生と一緒にタバコを吸っていた時、先生がおもむろにスラックスの位置を調整されたのだが、腰のところにあったのはベルトではなく白い靴ひものような縄だった。常識を重視する私の母親がこういうのを見たら10年ぐらいチクチク攻撃しそうである。また、酒焼け(?)がすごい完全にアル中のおじさんがいて面倒くさそうだな、と思ったら、私が好きな本を書いた人類学の有名な先生だった。むしろクセ型には研究がすごい先生が多い印象すらある。

学会では、研究者や学生が専門家にむけて研究を発表し、互いに切磋琢磨し合って科学の発展に貢献する。という建前のもと飲み会をするために来ている人が多い。

大学院生は研究をする。 ざっくりとしたイメージとしては

  文献を読む
  ↓
データを収集する(図書館で史料を探す、 統計データを分析、街に行って人に話を聞く)
  ↓
  分析する
  ↓
  発表する
  ↓
  出版する

という流れで研究は進む。このうち「発表する」にあたるのが学会である。

学会イメージ

学会と言ってもいろいろある。 例えば、アメリカの社会学で一番大きいのはアメリカ社会学会の年次総会通称ASAである。ASAは巨大で、52の部会に分かれている。本会議は5日ぐらい続き、多くの部会が総会の前に1日か2日ワークショップをやる。また毎年同時期にSSSPという、ASAに違和感を感じる社会学者たちの会議も同期間に近くの場所で行われる。そのため街に1週間くらい社会学者があふれる奇異な事態となる。

そのあいだ社会学者たちは旧知の村人を見つけたり、村人の新規開拓をしたりと飲み会に励む。いろいろな部会がレセプションを開くのだが、おおむね立食パーティ的な感じで、立ち飲みしながら周りにいる初対面の人と楽しい話(a.k.aどうでもいい話)をせねばならない。社会学の話ができるのは楽しいが、 私はあまり社交性がないのでつらいところもある。

わが学部のある先生もカンファレンスは居心地が悪いから嫌いだと言っていたし、アメリカ人でも苦手な人は多いようである。アメリカ社会学会の会長にもなったアーヴィング・ゴフマンも、パーティでは柱に隠れてひとり人間観察をしていたと聞いた。社会学という、人間の学問をしている人たちが人間嫌いでいいのかという気もするが、ある程度人間嫌いでないと、自分以外の人間に興味を抱かないのかもしれない。

今回の村人会議ではこういう城のようなところでパーティがあった。さすがヨーロッパ

発表の種類には大きく分けていくつかのタイプがある。キーノートレクチャーや、会長スピーチ、オーサー・ミーツ・クリティクスなど、偉い先生などが招待される「偉いパネル」。また、部会ごとのパネルに論文を投稿し、3〜5人くらいのひとが似たようなテーマをもとに発表して、それに対してコメンテーターが批評を加える「ふつうパネル」、また、円卓を囲んで話しあうラウンドテーブルという「座談会パネル」がある。座談会パネルといってもバカにすることはなく、有名な先生などに当たるといいコメント等をもらえると聞いた。

そのほかに地域ごとの社会学会などもあり、 ハワイ社会学会のような小さなものもある。今年はじめて参加したが、ご飯がしょぼしょぼで貧困の味がした。普段から貧困なのにこんな時まで貧しさを舐めるのは嫌なものである。来年の運営委員のニック先輩が、「こんな飯はありえない、来年はピザにする」と息巻いていたので、もう二度とくるのはやめようと思った。

そのほか、 専門的な学会も多い。例えばこの夏に参加した会議は、韓国のここ数年の不平等増大に関して研究している人だけが集まるというもので、2日間で参加者も80人くらいしかいなかった。しかしこういう専門学会のが参考になるようなコメントを頂戴できたり、助けてくれる先生に会えたりする気がする。

村人会議に行くまで

ほとんどのカンファレンスは論文の要約を送って、その内容で審査される(ASAは論文を送らないといけない)。落とされたという話はほとんど聞かないし、僕も経験がないので、審査自体は大きな学会でもそんなに難しいということはないと思う。もちろん、カンファレンスによってレベルの違いはあるだろうが、以前大学院生の学会の要約の審査のボランティアをしたときは、70〜80%くらいを不合格にするように言われたのだが、そもそも送られてくる要約の半分近くがめちゃくちゃで何が書いてあるかよくわからなかった。最低限意味がわかれば落ちることはないのではないかと思う。

冒頭のやりとりがあったのが、確か昨年の12月くらいの話だったので、8ヶ月も前から準備していないといけないということになる。

ペーパーが一応受かったとなると今度はお金だ。ハワイから学会に行くとなると飛行機代もバカにならない。そのため、旅行費の申請をする。ハワイ大学の場合、大学院生会のトラベルグラントというのがあり、毎月審査があるのだが、これは応募するとだいたい数百ドルはもらえる。社会学部も1回1,000ドルのトラベルグラントがある。ただ、1,000ドルでは旅費すべてはカバーできないので、ここ数年、ASAの季節には、社会学の大学院生会がもう少し大きなファンディングに応募し、ASAに行く生徒に追加で分配したり、行く人たちは部屋をシェアしたりして節約に励んでいる。

そのほかにもいろいろとトラベルグラントはあるのだが、1度もらってしまうと、1年間とかしばらくの間もらえないケースが多い。そのため、村人会議計画は戦略的にやらないといけない。例えば、今回の場合、来年はASAに行くのでトラベルグラントを温存するためハワイ大学のトラベルグラントは応募せず、カンファレンスのほうが遠くから来る生徒向けに提供しているグラントに応募した。

ここまでくれば後は発表の2〜3週間前に、パネルでペーパーにコメントをしてくれるコメント係の人に自分の書いた論文を送り、現地に乗り込むだけである。今回は韓国のビザ問題で、参加できるかどうか出発前日までわからなかったので(というかそれらの問題で行く気を完全に失っていたので)、何も予約して無くて前日ドタバタ大航海であった。


リスボンはきれいだった

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