「ロコに大人気」というデタラメ:日本人がつくる「ロコ」

ハワイには日本人の観光客が多い。毎日5,000人前後の観光客が日本からやってくる。観光はハワイの基幹産業であり、サービス業などは観光客を中心として回っているといっても言いすぎではない。興味深いのは、ガイドブックとかインターネットの口コミとかを見ていると、キャッチコピーはだいたい「ロコ御用達!」の人気レストランとか雑貨屋なのである。「ロコ」とはローカルの地元民のことで、地元民が行くんだからいい店に違いないという論理だ。しかし、「ロコ」の定義と「地元民がいくんだからうまいに違いない」という前提どちらも間違っている。

「ロコ」は白人ではない

ガイドブック、インスタグラム、テレビなどでおすすめされている「ロコに大人気」な店はだいたいおしゃれでちょっと高いカフェとかレストラン、雑貨屋などで、要はちょっとおしゃれな白人が行ってそうな店である。ハワイ大学の近くだと、自然派アイスクリーム屋さんBananとか、モーニンググラスコーヒーというカフェ、ビストロみたいな感じのthe Nookといった店だ。こういう店は高い。Bananのアイスは一つ10ドル近くするし、the Nookもちょこんとした料理が15から20ドルぐらいする。

日本のメディアには「ロコ」とはそういうものにお金を払うだけの余裕のあるブロンドの白人というイメージとしてあらわれる。しかし、ハワイにおける「ローカル」とは白人のことではない。ハワイの「ロコ」が誰かという問題は難しいが、ブロンドの白人がハワイのロコではないことはわかる。白人はしばしばざっくりといえば「ロコ」に相対する概念である「ハオレ」と呼ばれる。ハワイはもともとハワイアンの土地であるため、厳密な意味での「地元民」はネィティブ・ハワイアンだけである。しかし、ハワイの人種関係は複雑で、ハワイアンの人はあまり「ローカル」という言葉を使わない気がする。むしろ、広義の「ローカル」とはここで育ったアジア系の人たちのことのようである。

いずれにしても「ロコ」が日常的に行く店はバナンみたいな高くておしゃれな店ではないし、ハワイアンの人がハワイの「ロコ」が白人だと聞いたら激怒するだろう。

「ロコ」に大人気とされるBananとそれを紹介するカリスマコーディネーター、マキ・コニクソン(梨花、Shiho、サエコ、こじはる、吉川ひなのなどハワイ系芸能人を束ねるマキ軍団の総裁。マキコ・ニクソンではなくてマキ・コニクソンである点に注意。)


「ロコ」は必ずしもいい店に行っていない

地元の人に人気のある店が「ロコ御用達」の店だとすれば、それは安いレストランチェーンのZippy'sであり、L&Lハワイアンバーベキューであり、マクドナルドである。安いけど健康に悪い食べ物だ。

ハワイのローカルの人たちが本当に好きなZippy'sのチリビーンズ。ハワイの人たちはこの真っ赤で体に悪そうな謎のソーセージをよく食べる。


ローカルに人気のL&Lのチキンカツ。建設業の人たちがよく食べてる。半分くらい食べたら気持ち悪くなってくる油爆弾。


マクドナルドのプレート。ハワイのローカルは謎肉のポルトガルソーセージとかスパムなどの安い加工肉をよく食べる。


ちょっと誕生会とか人と会うようなときに食べに行く店もBig City DinerとかSide Street Innといったローカル飯の店である。米を一升ぐらいつかってそうな巨大チャーハンやフライドチキンなどが主なメニュー。本当にローカルの人しかいないようなカラオケスナックみたいな感じの店もあるが、出てくるものは同じ。そういう店はローカルの人の聖域である。日本人は格好がきれいなのですぐわかるし、ローカルの人の中には観光客をよく思っていない人も多いのでいじわるをされることもある。迷惑でもあるので行かない方が無難である。

Big City Diner のキムチロコモコ


Side Street Innのチャーハン。一つで6人ぐらい食べられる。おいしいけど炊き込みご飯みたいで日本人の知るチャーハンとは別の食べ物である。

別にいわゆる「ロコ」の食い物が悪い食べ物だとか、マクドナルドが悪いレストランだとは言わないが、日本の「ガスト」とかで出てくる食べ物の量が多いやつである。地元民が行く店=いい店という前提は成立していない。


どこにでも存在する「ロコ」問題

そしてこれはハワイに特有の問題ではないと思う。私自身も東南アジアや南アジアなどで、「ローカル」の人が行くようなレストランに行きたい!と言っているのに観光客向けの店を紹介され続けた経験が何度もある。ハワイは貧しい場所である。みんながみんなそれほどいいものを食べられるわけではない。そういうところでは、地元民が行く店は必ずしも観光客の視点からしてよい店ではない。

外食文化の発達は地域や文化に特有で、観光客向け以外に外食産業が発達していない地域というのは多くある。たとえば、伝統的ハワイ料理はもともとレストランで食べるものではないし、今日存在している店は基本的に観光客向けだ。地元民が行く店=いい店という前提は限りなく疑わしいのに広く受け入れている。

日本人がつくる「ロコ」

われわれは「ローカル」の人が食べるようなエキゾチックなものを食べたいという欲望を持っている。しかし「ロコ」とは何かについてもう少し考えてみてもいいと思う。ハワイのローカル料理を食べるといったって、アメリカ本土やアジアから輸入された食材を移民の人たちがハワイで調理している。「ロコ」をその本質から定義するのは無理というものである。

本当に地元の人が食べているものを食べたいのであれば、Zippy'sなどにいけばいい。でもみんなが食べたいのは「おしゃれでおいしくてロコの人が食べてる」食べ物である。そんなものが存在していないときに全然「ロコ」ではないものを「ロコ」だというのは嘘つきじゃないか?

「ロコ」カテゴリーをつくっているのは日本人たち(あと白人も)だ。日本ではマキ・コニクソンというハワイのカリスマコーディネイターが大人気らしく、こういう人たちが、雑誌やテレビ、ソーシャルメディアで「オーガニック」で「ロコ御用達」の店がどこにあるか教えてくださる。しかし、往々にしてそういう店は経営者が日本人だったり日本からの資本で運営されている。この人たちはグルだ。そしてこういう人たちがゲームのルールを決めている。ワイキキ近くで「急発展中」の「ロコが集まる」モンサラット通りなんて日本人オーナーの店ばかりである。お金の受け渡しがハワイで起こっているだけで、日本人が日本人にお金を払ってお金はあとで日本に戻るだけのことである。そんなときに「ロコ」と「観光客向け」とか「ローカル」と「グローバル」の線引きは無意味だ。

「ロコ」を売る日本人たちはハワイにいて、彼ら・彼女らのいう「ロコ」が単なるデタラメであることを知っているだろう。だとしたら、空想の「ロコ」があたかも存在するかのように振る舞うことは、それを買う観光客に、また、勝手に「ロコ」性をぶちあげられ、利用されているハワイの地元民に対して二重の嘘になる。これは不誠実ではないか?

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