漢 a.k.a. GAMIはリアルな漢だった

日本では毎日二日酔いなのに飲むというアル中スタイルで顔が土色になってしまいホノルルにかえってきてもしばらく具合が悪く、ブログもこんなに間が開いてしまった。あけましておめでとうございます。

第三のラップブーム

最近はテレビ朝日でやっているフリースタイルダンジョンという番組の影響をうけて、また日本語ラップにはまっている。今年はいろいろな地上波の番組にフリースタイルダンジョンに出たラッパーの人たちが出たり、ユリイカやSWITCHといった音楽専門誌ではない雑誌で日本語ラップ特集が組まれたりと日本語ラップ第三のブームといわれているらしい。

宇多田ヒカルの新アルバムに客演した北区の団地出身のKOHHとか川崎のBADHOP とか沖縄のラッパーたちとか、いろいろ地域色があっておもしろいのだけど(彼らの話はVICE JAPANが動画でまとめていて日本における不平等の現在を考える上でも参考になるので以下リンクしておきますね)、新宿代表のベテランラッパーの漢 a.k.a. GAMIが最近目立っていておもしろい。








MC漢はリアルな漢だった

漢 a.k.a. GAMIは90年代の後半ぐらいから活動している北新宿育ちのラッパーで新宿代表を自認している。漢は歌の中でマリファナを吸う話とか売る話とかがやたらと多い、というかネタはほぼそれだけである(以下参照)。



同時に、漢はストリートの「リアル」さに異常に固執していて、リアルじゃないものに厳しい。有名な話として、DABOというラッパーが「恋はオートマ」という曲を出してPVにも車が出てくるのに実際は運転免許を持っていなかったことに激怒し執拗に自分の曲中で攻撃した。しかし、漢が生きているのは日本である。マリファナを吸ってることをしょっちゅう公言していれば捕まるのではなかろうか。漢はリアルリアルといいながら実際は悪いことしてないのでは?あれはリアルというポーズみたいなもんだと私は思っていた。

日本に一時帰国した際、漢が主催するフリースタイルラップの日本一を決める大会の最終予選を見に行った。普通アーティストのマネージャーとか取り巻きは自分も音楽好きでそういう仕事についたおしゃれな若者が多いのではないかと思うが、渋谷のクラブに黒塗りのベンツのバンで現れた漢のカバン持ちは眉毛がほとんど全剃りで目つきがめちゃくちゃ悪く、手のあたりが垢みたいなもので茶色くなっている安そうなナイロンのジャケットを着た汚い若者二人で、ヒップホップに全く興味ないのか終始そとでタバコを吸っていた。おおお、リアルだぜと少し感動した。この二人はなんで漢にこき使われているのか人生ドラマを妄想してしまった。

大会はAbema TVで生中継があったのだが、途中の15分ほどの空き時間、漢ご一行はすかさず会場を出ると黒いベンツのバンに乗り込み走り去った。そして15分後、ご一行が会場に戻ってくる。するともう会場(割と小さかった)がある植物を乾燥させて燃やした際のにおいで充満してむせるようなのである。しかもみんな目がトロンとしている。おおおお、漢は思ってた以上にリアルな漢だと大いに感動、それが確認できただけでその日は満足した。

常軌を逸したリアルへのこだわり
漢の「リアル」さに感銘を受けた私は、以前から読みたいとは思っていたけどなんとなくつまらなそうだから読んでいなかった漢の自伝「ヒップホップ・ドリーム」を読んだ。これがめちゃくちゃ面白い。こういう本はあまり読まないけど、今まで読んだことのあるアーティスト自伝系ではダントツに一番おもしろい(実は矢沢永吉の自伝「成りあがり」も矢沢感がすごくて結構おもしろい)。河出書房新社というしっかりした出版社からでているのも読めば納得。


漢はめちゃくちゃ不幸な家庭環境で育ったわけでも、バリバリの不良だったわけでも、ヒップホップ界の中心にいたわけでもなく、つねになんとなくまわりに違和感を感じてかなり客観的に周りを観察している。こういうところから面白い音楽が生まれるんだろうし、こういう感性は社会学者にとっても大事なのではないかと個人的に思う。不良の文化を信じ込んじゃってるひとの不良話なんておもしろくない。

漢の異常にストイックな「リアル」への固執は笑うに笑えない。しかし笑える。あるとき、機材を壊されたのに弁償されないことがもとになってもめていた他のヒップホップグループと漢の仲間がフリースタイルバトルでたまたま対決、漢の仲間がうっかり「次あったら刺す」といってしまう。普通ならここで終わりだ。だが、「勢い余って事実にないことを言ってしまっても一週間以内に実行できれば『リアル』だというルールまで作っていた」(5章)漢たちは、言ってしまった以上やるしかないと、べつにやりたいわけではないのに実際にそのヒップホップグループを襲撃、おしりを刺すのである。もはや常軌を逸した連合赤軍並みのストイックさに脱帽。「これは傷害罪の時効7年が過ぎたからいえる話だが・・・」という書き出しもリアル。若者たちが真似しないように祈るしかない。




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