なぜハワイはホームレスの人が多いのか③

学期末は怒濤の日々である。学期の最後になってやっと自分の成績がまずいと気づいた生徒80人と学期末までいろいろなことを先延ばしにしていた大人達からのメール攻撃、自分の課題、YouTubeでのフリースタイルダンジョン視聴、朝5時に起きたのにオフィスで昼寝、成宮寛貴は本当にコカインをやっていたのか、そんなことよりあの報道のしかたは頭おかしいんじゃないか、授業中に砂糖をコカイン風に吸ってみたらどうなるだろうか、についての討論などなどの雑事に撃沈していているうちにまた間が空いてしまった。

専門ではないのできちんとは伝えられないかもしれないが、最後にハワイのホームレスネスの人種問題と貧困の犯罪化に少しだけ触れておきたい。

ハワイにおける人種と貧困


僕もここにくるまで全く知らなかったが(というかいまでも詳しくは知らないが)、ハワイにおける人種問題はアメリカ本土や日本におけるレイシズムとはまた違った意味で難しい政治である。今日では朝日新聞に「オバマ生んだ誰もがマイノリティー」なんて書かれるように人種多様性にあふれる場所として日本でもそしてアメリカでも扱われているが、ハワイの島々(池澤夏樹はハワイの人たちをリスペクトするため実際の発音に忠実に自分の本のタイトルをハワイイ紀行とした)は、アメリカに侵略されるまでは、それより以前にはジェームズ・クックらに「発見」されるまではハワイ人だけが住むハワイ人の場所だった(ハワイ人とは何ぞやという疑問はここではおいておく)。日本のメディアでは「ロコ」というのはなぜか白人のことになっているがハワイはハワイ人の土地である。

時は流れ2016年、先住民族であるハワイ人がハワイ州のホームレス人口の33%という不思議なことになっている。日系人・日本人はすごく少ない。侵略される以前には所有の概念がなかったハワイ人にとって、この島全体が家なのに住むところがないという皮肉なことになっている(僕の寮では太平洋諸島や南アジアの人が勝手に私のスポンジや洗剤やらなにやらをつかっていて、郊外育ちの僕は、おい!お前ら人のものを勝手に使っちゃいけないって習わなかったのか!と憤ってしまうが、われわれは経済の論理を絶対化しすぎである)。ここから家がない=ホームレスではなく、島が家としてあるけれども住むところがない=ハウスレスと言った方が適切という議論が出てくるのである。

この記事の中で、ハワイ大学の大学院生が、ハワイ人が路上で寝ているのに米軍が島を占拠しているのがハワイの不正義の象徴といっているがさもありなんである。先住民であるハワイ人だけでなく、マイクロネシア系の人を中心に太平洋諸島の人が多いのもハワイのホームレスネスの特徴である。マイクロネシア系はおそらくハワイでも最も差別されている。しかし、彼・彼女らは好きこのんでハワイで低賃金の仕事に従事しているわけではない。それらの島々は太平洋戦争の前線にされ、第五福竜丸の被爆で知られるビキニ環礁での原爆実験によって住むところを奪われたのである。



貧困の犯罪化

ジャーナリスト、バーバラ・エーレンライクは、最低賃金の仕事で1年間生活し、その体験をこの分野の名著ニッケル・アンド・ダイムドにまとめた。その10年後に書かれた増補版でエーレンライクは貧困の犯罪化が最も驚くべきトレンドだとしている。貧困だから犯罪をしてしまうという因果関係を超えて、貧困そのものが犯罪とされている。アメリカの34%の都市では路上に寝ることそのものが違法化されているし、43%の都市では車内で寝ることも禁じられている。また、罰金などを払えない低所得者層を逮捕するなどのポリシーによって微罪で逮捕されている人が大勢いる。ハワイにはまだ民営刑務所はないが、多くの刑務所が民営化されているアメリカでは、囚人の数が増え、刑務所が増えれば刑務所運営会社が儲かる。また、囚人を刑務所内で時給数十円で働かせるという奴隷労働に多くの大企業が依存している(驚くべきかなオーガニックが売りのスーパーホール・フーズもそうらしいよ)。貧困そのものを犯罪化することでお金を儲けている人たちがいる。それらの会社はロビーイングと献金で政治家に言うことを聞かせている。そして、刑務所運営会社のロビーイングはハワイでも行われている。

ホノルルでも路上で寝ることが違法化され、市長がそれを思いやりのある政策であると自称して苦笑された。当然ながらこんな方法は問題の解決にはつながらない。人種と貧困の犯罪化が関係あるのは、特定の人種がよりターゲットにされるからである。例えば黒人は白人の6倍逮捕・収監されやすい。社会学者アリス・ゴフマンは、フィラデルフィアの低所得地域での6年間の生活をまとめた本のタイトルをOn the Run(逃走中)とした。黒人とヒスパニック系しか住んでいないこの地域では街の誰もが何らかの微罪で常に警察から逃亡中だからである。ゴフマンの研究は、私たちがどのように子供たちを大学―または刑務所に送り込んでいるか、という下のスピーチに簡潔にまとめられている(日本語字幕あり)。



2010年の時点で、ハワイにおいてネイティブ・ハワイアンと太平洋諸島出身の人々が投獄される割合は白人の4倍である



とここまで書いて一旦このハワイにおけるホームレスネス問題はいったんおしまいで、また少し学んでから続きを書きたい。明後日からフィリピンである日本研究のカンファレンス、韓国滞在、父親の住むベトナム訪問、そして日本と忙しいので次回はフィリピンから。

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